「海の裁判所」?
なんだ唐突に、「海の裁判所」?
寝ぼけたことをいうんじゃない、別に訴訟物が海に関するものでも、山に関するものでも、空に関するものでも、管轄は全部「普通の裁判所」だろうが!
だいたい、そんな裁判所違憲だ!
わかったらさっさと勉強して寝ろ!
と、いわれるかもしれません
たしかに
日本国憲法第76条2項には
「特別裁判所は、これを設置することができない。行政機関は、終審として裁判を行ふことができない。」
とあります。
「特別裁判所」とは「特別の人間または事件について裁判するために、通常裁判所の系列から独立して設けられる裁判機関」とされています(『憲法』第7版芦部信喜p358)
この条文に関する判例としては
最大判昭和31年5月30日刑集10・5・756「児童福祉法違反事件」が有名ですね。
すなわち、判旨は
「家庭裁判所は一般的に司法権を行う通常裁判所の系列に属する下級裁判所として設置されたものであり、特別裁判所ではない。」
とします。
ところが、この条文は「特別裁判所」は禁止するのに対して行政が終審以外で裁判することを禁じてはいません。
つまり、第一次的に行政が裁判類似の手続きを司る機関を設けることはOKなのです。
その具体例として、題名に挙げた「海の裁判所」すなわち「海難審判所」、
国税に関する審査請求(不服申し立て)の裁決を行う「国税不服審判所」、
特許の出願の審査をする「特許庁」などが挙げられます。
行政の機関とされていますが、その実態は裁判をしているようなものなので
各審判は法曹が主体となることも多いようです。
国税不服審判所の所長は近年は東京地裁統括判事がなる傾向があるようです。
公正取引委員会、特許庁も関係者は法学者や法曹や準法曹がおおい様子。
ただ、海難審判所の審判官についてはその特殊性からか、応募資格が次のようにしめされています。
昭和40年4月2日以降に生まれた者で、次の要件に該当する者
一級海技士(航海) 又は 一級海技士(機関) の免許を受けた後、2年以上、次のいずれかの船舶の「船長」又は「機関長」の経歴を有する者
基本給も確認してみると 319,200円 ~ 410,200円 とあります。(結構もらってる)
以上のように、司法機関ではありませんが、「海の裁判所」はたしかに存在します。
しかもその海の裁判官(審判官)はまあまあ給料がいいです。
以前平均年収ランキングで北海道の猿払村が第三位という記事をみました。
その理由はホタテをはじめとする漁業の発展とのことです。
また、海に関する資格といえば「海事代理士」がありますね。
法学部の知識を生かして、海事代理士と船長の資格を取得して、審判官になれば
良い暮らしができるかもなーと、妄想したりしています。